記事タイトル→2007-02-12 Mon  チョコと彼女と冬の終わり記事タイトル←

三つの単語を「と」でつなげるのが好きなんですかね、僕は。*
 部室に入ると、中にいた濱田がいきなり話を振ってきた。
「先輩、甘いもの好きですか?」
 何か裏があるに違いないと思い、どう答えたものか迷う。肯定したら賞味期限切れの生菓子で食わされるのではないだろうか。かといって否定したら自分の分をあいつに食べられたりするんじゃないだろうか。思案のしどころだろう。
「甘さの程度によるな」
「具体的にはどのぐらいが? たとえばチョコレートで?」
「なぜチョコレートなんだ?」
「荒川さんも相変わらず・・・勘が鈍いですね」
 杉山がため息をつく。先ほどから気がついていたのだが、最近、俺の中で彼は濱田とセットとなっており、濱田がいればたいてい彼もいる。
ちょっとその発言は癪に触ったため、しばらく考えたがわからない。
「ヒントをよこせ」
「ヒントがいるんですか? 最初はバです。むしろヴァです」
 それでようやく単語が思いついた。
「あれだ、ヴァン・アレン帯」
「なんでそんな似て非なる宇宙物理学単語が出てくるんですか? わざとじゃないですよね?」
 結構本気でいったつもりだったので、いたく傷ついた。しかし、ここまで来たらさすがにわかった。
「ひょっとするとあれか? 十四日?」
「その通りです! さすがは先輩。さて、なぜ十四日に女の子は男の人にチョコレートをあげるんでしょうか?」
「さあ? 大方、テレビとか街の雰囲気とかマスコミに流されてついついチョコを衝動買いした挙句、自分で食べると太るからそこらにいる男子にでも恩を着せておこうとでも思っているんだろ」
「そういう人もいるのかもしれませんが、それは一般的ではないと思います」
「しかし考えてもみろ。チョコである必然性は皆無だ。となるとこれはやはりメディアに踊らされた結果に相違あるまい? そもそも某お菓子会社が」
「そういう話をすると長くなるし不必要に社会派になるのでやめてください! もっと普通に考えることは出来ないんですか? 常識的な発想で答えてください」
「日ごろの礼を形にするんじゃないのか? 海外では男からも送ることだし」
「なんで急に世界規模で常識的になるんですか!」
「常識的になれと言い出したのはお前だろうが!」
「柴田くん、常識的な解答を今すぐ出しなさい!」
「な、何で俺?」
「いいから、早く、答えなさい!」
 濱田の目が血走っている。何が起こったのだろうか。何かに取り憑かれたとしか思えない展開だ。もしくは何らかの発作か。
「・・・愛の告白?」
 杉山は言ってからものすごく恥ずかしそうに顔をゆがめる。なら言わなければよさそうなものだが、こいつは完全に濱田に逆らえなくなっている。哀れな奴だ。
「いい答えね、杉山くん。次からは口答えしないですぐに答えるように」
「・・・はい」
「おい、杉山、お前本当にいいのか? もうちょっと自分の立場を向上させようとは思わないのか? 見ていて非常に不憫なんだが」
「だって・・・逆らい難いですよ、やっぱり」
 杉山は陰のある沈んだ表情を見せた。彼の先行きは暗いな。このまま一生濱田に仕えることになりそうだ。それもまた人生か。
そう思っていると濱田がため息を一つついた。
「杉山くんはどうでもいいです」
「いや、よくないから」
「とりあえず今はいいんです。先輩、で、どんなチョコがお好きですか?」
「俺がどんなチョコが好きとか知ってどうするんだ? それに、すまんがチョコレートに含まれるテオブロミンを過剰に摂取すると命を落とすかもしれないと医者に止められ」
「先輩は犬ですか?」
 濱田にツッコミを入れられるとは思ってもみなかった。他の言い訳を考えていなかった俺としては非常に困る。
「ともかく、俺はチョコは好かん。悪いが義理を贈るつもりなら諦めてくれ。気持ちだけで結構だ」
「こないだ食べてましたよね、チロル」
「えーっと・・・チロルは例外だ。きなこもち味だし」
「その前は99%食べてました」
「あれはカカオだ。チョコじゃない」
「納得できません」
「それは残念だ。急用を思い出したのでこれで失礼させてもらおう」
「どんな用ですか?」
「あー、父が危篤だ」
「今まで忘れていたんですか? 親不孝にもほどがありますね」
「後輩を大事にした結果として、親を忘れてしまったんだ。原因はしつこい後輩にある」
「・・・不毛な討論ですね」
 杉山の突っ込みがさすがに胸に突き刺さった。確かに、ほとんど漫才のようになっていた気が自分でもする。
「とりあえず、今だけでも受け取るって言ってあげればいいじゃないですか」
「今だけってなによ?」
「あ、いや、深い意味じゃなくって」
「わかったわかった。ここは杉山を立ててあげるとしよう。ところで、柴田はどうした?」
「先輩、同じクラスでしょう? なんで学年の違う私たちに聞くんですか?」
「いや、今日はあまり見ていない気がする。実験はすると朝言っていた気がするんだが・・・気のせいだったかな」
 そういっているうちに、部室のドアが開いてスーパーのレジ袋を抱えた柴田と森井女史が入ってきた。
「ただいまー」
「ここに暮らしているのか、お前らは」
「言ってみただけだよ。さーて実験するか。化学部としてな」
 柴田はそう言って机の上に袋の中身を出した。板チョコだ。なぜ。
「柴田さん、なんでチョコを?」
「今日はチョコの油脂量と融点の相関関係を調べる実験を行う」
「またもっともらしい言い訳を・・・どうせ森井先輩と一緒にチョコを作るだけでしょう?」
「鋭い洞察だ、濱田。しかしちょっと違う」
「柴田君が私にチョコを作ってくれるんだよねー」
 森井女史が嬉しそうにいった。そうか。ここでもなにかエラーが発生しているのか。うちの部ではよくある現象なのかもしれない。
「なあ、柴田。何でお前がチョコを?」
「バレンタインは男が女にプレゼントを渡す日だろう?」
「グローバルな視点においてはそのとおりだ」
「よって俺が作るのに問題はないはずだ」
「ホワイトディは知っているよな?」
「無論だ。男が女にプレゼントを渡す日だろう?」
「・・・なにか問題に気がつかないか?」
「どこにも問題はない。さて、じゃあ実験するか。杉山、ビーカーとか一揃い出してくれ」
「・・・ビーカーでやるんですか?」
「湯煎ぐらいは出来るだろ」
「はあ・・・まあいいんですけどね。森井さんがよければ」
 杉山はぶつぶつ言いながら器具棚からビーカーなどを用意し始める。面白いので実験を見物する気は満々だが、手伝うのはやめておこう。悪事に加担するのは趣味じゃない。
「あれ? 山根さんは?」
 柴田が急に変なことを言い出した。
「別に山根女史がここにいなくても不思議はないだろ。会う予定でもあったのか?」
「いやぁ、この面子が揃っていていないって言うのがもはや違和感あるんだよね。いつもいるじゃん、だって」
「それもそうだけどな」
「そうだ、荒川は山根さんに贈ったり貰ったりする予定はないのか?」
 空気がものすごい勢いで凍りついた。主に濱田周辺から異様な気配を感じる。
 去年は貰えなかったし、それを当然だと思っていた。山根女史からチョコを貰っていたのはせいぜい小学校までで、中学に入ったころにはあまりそういった付き合いはなくなっていたのだ。確かにこの一年間急激に関係が昔のそれに近付きつつはあるが、互いに高校生になった以上、あるラインは越えられない。友人としてもらえることもないだろう。仮にクラスの男子全員に配っても、俺は貰えない気がする。
「お前らの関係は今ひとつわからん。もうちょっとこう、はっきりくっきりさっぱりした関係にならないのか?」
「あー、でも早織もなんか煮え切らないよね。よくわかんない」
 森井女史がなにもわからないことを言ってくる。わからないなら頼むから発言しないでくれ。
「荒川先輩、チョコきら」
 濱田が途中で言葉を止める。山根女史が俺に贈ろうとしたときに受け取らせないようにしたのだろうが、そうなると濱田自身が贈れないことに気がついたのだろう。言い出す前から気がついてよさそうなものだ。
「わけわからんこといってないで、さっさとチョコ作りを始めたらどうだ?」
「・・・ふむ、そうだな」
 柴田は俺の発言の意図を汲んだらしく、さっさと器具を抱えて実験室に向かった。俺もそれにのこのこと付いていく。


<続く>
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頑張って書いてますね。

そうそう、昨日歩く事を強いられてきたんですが、流石につかれました。
高2の方々には会いませんでしたが、高1の2人(三&関)には出会いましたよ。
ちなみに総合タイム3時間55という結果でした。(クラスの仲間を気にせず突っ走っていたらもっと早かったと思いますが)
ではでは
2007-02-13(Tue) ・ 投稿者[Joker] ・ 編集 ・ Top

コメント→No.1475 コメント←

>Jokerさん
ひょっとしてさりげなくサボった僕を非難してません?
で、でも中学時代はきちんと参加していましたよ、僕だって。

あと、一応名前はたとえそのレベル(一文字だけ)でも出さないで下さると助かる。
2007-02-13(Tue) ・ 投稿者[G-song] ・ 編集 ・ Top

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