記事タイトル→2006-10-31 Tue  南瓜と悪戯記事タイトル←

時期ネタ外伝、ハロウィンです。
後輩二人がメインです。
なんか自分の作品の同人を書いているような気分でした。
時期ネタ読んでいらっしゃらない人は・・・がんばってください。*
 ラッシュでにぎわっていた電車を降り、僕はほっと息をついた。気温はだいぶ下がってきているのに、人が多いとやっぱりずいぶん熱いものだ。幸い、この駅で降りるのはうちの学校の生徒ぐらいなので、ホームは混雑しない。僕は改札に向けて歩き出す。
「杉山くん、ちょっと待って」
 声をかけられて反射的に振り向くと、ビニール袋をいくつも抱えた濱田さんが立っていた。僕はさすがに驚いて尋ねる。
「なに? その袋は」
「いいから、ちょっと持ってよ。女の子に荷物持たせないでよね」
 濱田さんは右手にぶら下げていた分のビニール袋を僕に差し出してきた。あわてて受け取ると、ずっしり重い。これを持って電車に乗っていたのなら大変だっただろう。
「なにこれ?」
「中身、見ていいよ」
 言われるままに袋を覗くと、中ぐらいの南瓜が入っていた。一つの袋に二つずつ入っている。濱田さんが持っている分を合わせると、ものすごい数になる。
「なに、これ?」
「南瓜でしょ。今日は何の日?」
「ああ、ハロウィンか」
「正解! はい、正解者には賞品ね」
 濱田さんは左手を僕に差し出す。あまりにもニコニコしながら差し出されたので、僕は思わずその袋を受け取ってしまった。
「ありがと。じゃあ部室まで持ってってね。私、今日は日直だから。ごめんね」
「え? あ、ちょ、ちょっと待ってよ!」
 濱田さんは軽くなった腕を振り回しながら、軽快なステップで改札をくぐっていった。あわてて追おうとしたが、南瓜のせいでポケットに入っている定期を出すのにえらく手間がかかってしまい、間に合うはずもなかった。


 部室には幸い、誰もいなかった。僕は荷物を机の上に置き、息をつく。手を見ると赤く痕がついていた。なんだかえらく情けない気持ちになって、再びため息をつく。
 そこに突然、柴田さんが入ってきた。机の上に詰まれたビニール袋を見て、怪訝な顔を浮かべる。
「なんだこれは? 店でも開くつもりか?」
 そして袋の中を覗き込み、同じ文句を繰り返す。
「なんだこれは?」
「濱田さんですよ。ハロウィンだから、とか笑っていっていました」
「あきれた奴だな。一応聞いておくが、服装は?」
「さすがに制服でしたよ」
 僕が笑いながらいうと、柴田さんは顔をしかめる。
「けしからんな」
「は? なにがです?」
「やるなら徹底すべきだ。よし、杉山、放課後は仮装してから来るように。じゃ、そういうことで。お菓子は俺と荒川で用意して置こう。安心したまえ」
「は? 柴田さんまでなに言い出すんですか? 僕ら高校生ですよ? この歳でハロウィンですか?」
「なにを言っているんだ、おまえは。ハロウィンはもともとキリスト教の万聖節に由来する由緒正しい行事だ。われわれが祝って何が悪い?」
「僕はキリスト教徒じゃありません」
「クリスマスやバレンタインは祝っといて、ハロウィンだけ無視するというのは問題だな。キリスト教を侮辱しているといっても過言ではない。宗教を信じるか信じないかは自由だが、中途半端に信仰しているふりをするのは信者の方々に失礼だ。是が非でも本日はハロウィンを祝うぞ。いいな?」
 急に先輩としての威厳を出されてしまうと、僕は何も言えずただうなずいた。しかし、仮装なんて学校でどう用意しろって言うんだ?
「ほら、さっさと教室いかないと遅刻するぞ」
 柴田さんはそういってさっさと部室を出て行ってしまった。それとほぼ同時にチャイムがなった。机の上に置いた鍵を取ろうとしたら、ビニール袋に埋もれていることがわかった。僕は南瓜の山を掘り起こして鍵を見つけ、あわてて部室を出た。


 昼休み。
 今日は母さんが弁当を作ってくれなかったので、外で食べることになった。友人をいくらか誘ったが、悉く弁当を持っていたため付き合ってくれなかった。しょうがなく一人で学外に出ようとしたところ、濱田さんが前を歩いていた。
「濱田さん、どこいくの?」
「ん? なんだ、杉山くんか。柴田さんに言われて、コスチュームを買いに」
「・・・マジ?」
「冗談よ。服は演劇部に借りるわ」
「いや、それはそれで本当なの?」
「あれ? 杉山くんはどうするつもりなの? 一緒に借りるんでしょ?」
 濱田さんと話しているとたまに思うことだけど、本当に論点があわない。彼女の普通と僕の普通はどうもちょっとずれているようだ。僕のほうが正しい自信はあるんだけど、濱田さんにこうもあっさり言われるとどうも困ってしまう。
「ああ、うん、お願いするよ」
「オッケー。じゃあご飯いこうか?」
「あれ? 濱田さんも今日は外食?」
「そりゃそうよ。あれだけ南瓜持っていて、他のものが持ってこられるわけないじゃない」
 濱田さんに笑い飛ばされ、僕も声を上げて笑った。
「ってことで数学の教科書と英語の教科書貸してね」
「・・・は? 忘れたの?」
「だから、持って来てないの。今言ったじゃない」
「いや、あくまで弁当だけの話かと思って。なに? それじゃあ本当に何も持ってきてないの?」
「定期だけね。あ、南瓜買ってお金もないから今日は杉山くんのおごり、よろしくね」
 濱田さんは軽やかにステップを踏みながら先に行く。僕はあわてて、おごらないと大声を出して後を追ったが、彼女に届いているようには見えなかった。


「いやぁ、ごちそうさま。悪いね」
「言っておくけど、おごりじゃなくて貸しただけだからね」
 僕は大分軽くなった財布をポケットにしまう。どうして昼食に二千円もかけられるのだろうか。どう考えてもおごりだと思っているらしい。ああ、これじゃあ欲しいCDが買えそうにない。
「あれ? どこいくの?」
 教室を素通りしていった濱田さんに声をかけると、濱田さんは恐ろしく奇妙な表情を浮かべて、
「演劇部に決まっているじゃない。来ないの?」
 と言い放った。本当に仮装するつもりらしい。僕は少し悩んだ後で、いくだけいってみることにする。
「ほら、さっさとしなよ」
 僕が来ることを端から疑っていないらしい。僕は今日何度目になるかわからないため息をついた。
 演劇部室にはうちの学年の女子が何人かいた。あまり話したことのない人たちばかりだったので、どうも中に入るのにしり込みし、ドアのところに立って濱田さんが出るのを待つことにする。
 中を見回すと衣装や小道具、大道具の材料と思しき木材などが部屋中に散らばっている。化学部室より汚いかもしれない。
「ほら、杉山くんも選びなって」
「あ、いや僕はいいよ」
「私一人で仮装しろって言うの? 恥ずかしいじゃない」
「ならしなきゃいいでしょうが」
「まあまあ、杉山くんもトライしなって」
 演劇部の女の子たちがやってきて、僕の腕を引っ張った。濱田さんと仲がかなりいいということなのだろう。まさか無理やり振り払うわけにもいかず、部屋の中に連れ込まれた。
「ほら、これとかどう?」
 濱田さんは黒い布を僕に渡してきた。広げてみると大分大きく、床についてしまった。
「なにこれ?」
「身にまとって、死神みたいな?」
「あ、鎌もあるよ?」
 演劇部の女の子が僕に鎌を差し出す。持ってみると予想外に重く、かなり危険だ。
「これ、なにに使っているものなんです?」
「昔誰かが農家の役で使ったとか」
「はあ・・・でも危ないから、これは。ちょっと使えないよ」
「じゃあ死神はなしってことね」
「女装とかどう? 杉山くん意外となよっちいし」
「あの、ちょっと言い方が酷くない?」
 僕の言葉を完全に無視して、女の子たちは盛り上がっていった。時計を見ると、そろそろ昼休みも終わるころだ。このままこっそり逃げ出してしまおうか。
「逃げる気?」
 濱田さんにいきなり声をかけられた。前に荒川さんも言っていたが、山根さんや濱田さんには何か特殊な能力でも備わっているのだろうか。
「あ、いや、ほら。もう時間だしさ」
「じゃ、これね」
 濱田さんは僕の言うことなど聞こうともせず、服を渡してきた。広げてみると、セーラー服だ。うちの制服ではないらしい。セーラー服?
「濱田さんこれ着るの? あんまり仮装になってなくない?」
「なにいってんのよ。あんたが着るんでしょうが」
「いや、それはないから。うん。無理」
「いいから、いいから。サイズ確認してくれない?」
「全然よくないから。少しもよくないって」
「うん、サイズ確認しないとよくないよね」
 だめだ。会話が通じない。よってたかって僕に女装をさせたいのか、この人たちは。どういう趣味なんだ。
「とりあえず、女装はしないから」
「そうだよね。私たちがここにいちゃ恥ずかしいよね。でも、見ないから大丈夫」
「あの、人の話を聞いてくれない? お願いだからさ」
 そのとき、チャイムが鳴った。あわててみんなは外に出る。僕も濱田さんに背中を押され、部屋を出た。鍵をかけ、演劇部の女の子たちは華麗に去っていき、どさくさにまぎれて濱田さんも行ってしまった。
取り残された僕は自分の持っている物体に気がつき、こんなところを見られたらどうなるかと思って慌てふためいた。


 放課後。とりあえず紙袋に例のセーラー服を入れ、僕は部室に行くことにした。演劇部の子を探したのだが全然見つからなかったので、ひょっとしたら濱田さんとこっちにきているんじゃないかと考えたのだ。
鍵は開いていた。結構急いできたので、こんなに早くから人がいるということは、濱田さんたちが先輩方を仮装で驚かそうとしているのだろう。
「失礼します」
 ドアを開けると、中には柴田さんと森井さんがいた。僕は反射的にドアを閉じ、
「失礼しました!」
 といって部室から走って離れた。なにをしていたのかは知らないが、お願いだから鍵をしてくれ。
「どうしたの? もう先輩たち来てた?」
 急に声をかけられたので驚くと、濱田さんがさすがに驚いた顔を浮かべていた。
「柴田さんと森井さんがいてね。逃げてきた」
「ああ、そりゃまあ・・・なるほどね」
 改めて濱田さんを見ると、ローブのようなものをまとっている。
「死神?」
「ううん、魔女。あとは帽子もあるんだ。ほら。あとは箒を調達すれば完璧」
 ごそごそと鞄から帽子を取り出してかぶってみせる。なるほど、それらしく見える。
「で、なんで杉山くんは女装してないの?」
「するわけないだろ・・・さすがに勘弁してよ」
「スカートだけでもいいよ」
「それがいやなんだって」
「しょうがないなぁ、じゃ、これで」
 今度は南瓜の被り物を差し出してきた。これも演劇部にあったのだろうか。どんな部だ。よくよく考えたら演劇部が劇を発表したなんて話聞いたことがない。衣装を集めるのが目的の部なのかもしれない。
「まあこれのほうがマシかな」
「じゃ、これでよし。とりあえず荒川さんたちに見つからないようにどっかかくれないとね」
「別にそこまでしなくても・・・」
「驚かさなくっちゃ意味がないじゃない。ほら、行くよ」
 魔女の姿をした濱田さんに引っ張られ、そのままずるずると付いていく。どうも今日は濱田さんに振り回されてばかりだ。


「―――つまりハロウィンは死者の日という背景を抜きに理解すべきではないのだ。ここで我々は、キリスト教における死の概念を最初に理解したいと思う。天国と地獄という世界は仏教にも同様に存在する。もっとも全く一緒と言うわけではなく、仏教では地獄の種類が―――」
 部屋の中から荒川さんの声が聞こえる。相変わらず絶好調だ。いつの間にかキリスト教から仏教に話題が移動しているところなんてさすがとしか言いようがない。
 どうやら部屋には荒川さん、柴田さん、山根さん、森井さんが揃っているようだ。それを確認して濱田さんはうなずき、大きくドアを開けた。
「トリック・オア・トリート!」
 中にいた四人はあっけに取られて僕らの登場を見ていた。思った以上に視線が冷たい。柴田さんが着てこいって言い出したのに。
 濱田さんはあまり気にしていないようで、先輩方に向かって大声で喋る。
「さあ、荒川先輩、大人の甘くて濃厚なお菓子か性的ないたずら、どっちかを選んでください」
「逆セクハラか? まあいい。もちろん、お菓子だ。くれてやろう。そこの南瓜も来たまえ」
 荒川さんはあまり動ぜずにビニール袋を取り出し、中からごそごそ取り出して僕らに渡してきた。
 僕の手元には酢昆布、濱田さんの手元にはチーズ鱈が置いてあった。僕らは非常に複雑な気分に沈み込む。
「・・・柴田先輩、なんかください」
 かすかな希望を頼りに濱田さんが柴田さんに向かって手を差し出す。柴田さんはニコニコしている。
「安心しろ。俺のはちゃんと甘いお菓子だ」
 そういって、僕らの手に甘納豆を置いた。からかわれているのかと思ったら、普通に僕らが喜ぶであろうという善意に満ちた表情を浮かべている。もはやなんといっていいのだろうか。この部の人たちはどこかがずれている。しかも致命的に。
「杉山くん、あなたも結構慣れてきているわよ?」
 山根さんはそういって微笑んだ。なんで僕が考えていることがわかるのだろうか。僕は深く考えないようにして南瓜を取り、苦笑いでそれに答えておく。
「で、そのセーラー服は趣味?」
「え? うわっ」
 見ると、袋が倒れて中が丸見えになっていた。凍るような視線が僕に注がれる中、濱田さんが思いっきり笑っている。
「なんだ、女装するつもりだったのか? そっちのほうが受けたのに、なんでそうしなかった?」
「荒川さん、さすがにそれは無茶ですって。僕にだってプライドがあります」
「そんなくだらないものは捨てて置け。そうそう、くだらないものといえばこの南瓜はどうするつもりなんだ? 食うのか? ちょうちんでも作るのか?」
 荒川さんは机の上に転がる南瓜を指して言う。
「もちろん、食べますよ。この部ってお鍋ありましたよね?」
「無論、ある」
「化学部に鍋なんて要るのかしら?」
「山根、化学部をなめちゃいけないぞ」
「荒川くん、そういう問題でもないんじゃ・・・」
「ほれ、醤油だ。砂糖と塩もあるから、適当に煮込めば食えるだろ。包丁は確かビュレットの隣にあったはずだ」
「ありがとうございます、柴田先輩。ほら、杉山くんも早く」
「僕? なんで?」
「料理手伝いなさいよ」
「だからなんでさ?」
「いいじゃん、同じ高一として、先輩方にハロウィンの南瓜料理を振舞うのよ」
「なんだよ、それ」
「ええい、つべこべうるさいわね。先にいっているから」
 濱田さんは調味料をいくつか持って実験室のほうに行ってしまった。ということは僕に南瓜をもってこいと言うことだろう。
「お前も大変だな」
「ほんとですよ・・・」
 荒川さんの言葉に、僕は思わずため息をついた。そして立ち上がり、机の上にある南瓜を抱える。まだ鍋も置いてある。鍋ぐらい持っていってくれればいいのに。僕はもう一度深くため息をついた。
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コメント→No.1228 面白!コメント←

何って濱田さん、最高!この人になりたい!
絶対人生楽しいぞ!
で、ハロウィンって、小さい子がやるものだと思ってた!違うんだね!
杉山君のキャラクター、なんとなく、G-songさんっぽい。
こうやって振り回すタイプの女の子がいいのかも…v-344
2006-11-03(Fri) ・ 投稿者[らんらら] ・ 編集 ・ Top

コメント→No.1231 コメント←

>らんららさん
こっちでは結構大人もやっていますね。お菓子を要求はしませんけどw

どうも濱田の人気が高い気がしますね。作者的にも動かしやすいんですけど。
あと、杉山に限らずこの作品の男はみんな僕に似ています。
ひょっとしたらこの作品に限らず、僕の小説の男キャラは僕に似ているのかもしれません。

振り回されるのも嫌いじゃないですが、
最近ではS疑惑をもたれちゃっていますw
2006-11-03(Fri) ・ 投稿者[G-song] ・ 編集 ・ Top

コメント→No.1239 コメント←

鎌っていわゆる死神が持ってるような人くらいあるやつですかね?それなら重いでしょうがそんな鎌を農家が使うとは思えませんね。もし一般的な鎌ならかなり軽いと思いますよ。重いと刈ってて疲れるからね。
さてくだらんつっこみはこれくらいにして。
杉山くんて存在感ないですね。私の中で杉山っていうと試験中にMr.Nから少林ビームをくらって倒れた人しか…。濱田さんの存在感におされてさらに小さい物に。多分近い将来「杉山?ああ濱田のおつきね」となるでしょう。いや、すでにそうか?
最近本当に濱田さんよくでますね。人気があるからですかね。
2006-11-05(Sun) ・ 投稿者[穂多流] ・ 編集 ・ Top

コメント→No.1243 コメント←

>穂多流さん
二日ぐらいで書いたものだからそう突っ込まないでおくれ。
あと杉山といっても君の知っている彼ではなく、僕の小学校の同級生だからね。

今回は一応「外伝」だから後輩二人がメインってだけです。
ただまあ実際書きやすいキャラなんですよね。勝手に動いて。
2006-11-05(Sun) ・ 投稿者[G-song] ・ 編集 ・ Top

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