記事タイトル→2006-08-17 Thu  夏の終わりの始まりに(2)記事タイトル←

長さのバランスを一切考えておりませんのでご注意ください。

登場人物紹介
一話目:「ホワイト・デイズ」
二話目:「馬鹿どもの日」
三話目:「その想いも梅雨知らず」
四話目:七の夕暮れ
今シリーズ:
夏の終わりの始まりに(1)
*
 俺は腕時計を見つめる。十時十五分だ。集合時間だ。そしてここは部室だ。
「・・・ふたり、遅いですね」
 杉山がため息とともに言う。
「やっぱりあれですか? 女性は支度に時間がかかるとか」
「単純に、二人とも時間を守るという常識が欠けているだけだろ」
「・・・ですかね」
 杉山がため息をつく。ため息の似合う男だ。若いのに不憫な。
「・・・そういや荒川さん」
「なんだ?」
「前々から気になっていたことがあるんですが、お伺いしてよろしいですか?」
「普段にも増してやけに丁寧だな。まあ言うだけ言ってみろ。怒りはせん」
「山根さんと付き合っているわけじゃないんですか?」
「ないな」
「じゃあ、濱田さんのアタック、なんでかわすんですか?」
「・・・お前、こういう話好きなのか?」
「へ? いやまあそれなりに興味はありますよ。年相応に」
「俺はあまり興味を持たないようにしている。以上で答弁は終了させてもらおう。悪いな」
「・・・荒川さん、怒ってません?」
「お前には怒ってないから安心しろ」
 こういう自分の態度に腹が立つだけだ。
 七夕の日、森井女史の短冊には「荒川君と早織の仲が進展しますように」と書いてあった。周りからこういう目で見られるのにはなれている。小学校のころからよくはやし立てられたものだ。
「もう一回いいですか?」
 杉山が思い出したように言う。
「荒川さん、山根さんのこと好きですよね?」
「・・・答弁は終了したと言ったよな?」
「・・・なるほど。わかりました」
 杉山が言い終わらないうちに、部室のドアが勢いよく開いた。濱田と山根が同時に姿を現す。
「すいません、遅れましたー」
「おまえらなぁ・・・特に濱田、お前、自分で時間を決めといて遅れるか?」
「だから、謝っているじゃないですか。それに女の子は支度にいろいろと時間がかかるんですよ?」
「それなら早く起きて用意しろ。山根、君はなぜ遅れた?」
「私? 寝坊よ。それが?」
「・・・山根さん、逆ギレはさすがにどうかと・・・」
「杉山君、ひとついいかしら?」
「は、はい。なんですか?」
 杉山が体を固くする。山根女史相手だから警戒もやむをえまい。
「女の子は支度にいろいろと時間が」
「まて、それはすでに濱田が言った」
「そういえばそうね。じゃあまあそういうことなのよ。ほらほら、さっさと行くわよ」
「そうですよ。泳ぐ時間が減っちゃうじゃないですか」
「遅れてきたのはお前らだよな?」
 俺の言葉も聞かず、女性陣は部室を出て行く。ドアを閉めるとき、濱田が思い出したように
「先輩? 置いてきますよ」
 といったのにはさすがに殺意が沸いた。
「なんかうちの部員って女に弱いですよね」
 柴田は確かに弱い。俺もまあ強くはないのだろう。杉山は誰に対しても腰が低い。総じて見ると確かに女に弱いといえそうだ。まったく、情けない話だ。

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