今回はちょいと自作の小説なんぞを貼ってみます。メキシコ行き決定直後に書いたものなので、三ヶ月ほど前のものでしょうか。短編なんですけど、それなりの長さはありまして、400字詰め原稿用紙15枚ぐらいです。
プロフィールのところにもこっそりと書いてありますが(予断ですがプロフィールはこまめに変更される虞があります)、物書き志望なんですね(他人事)。日がな一日ぼんやりしているとストーリーが思いついたりもするんですが、如何せん文章能力が足りない。そういう練習のために書いたので、中身はあまり面白くありません。ご勘弁を。感想・批判を頂ければ幸いです。
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少年はどこか冷めた目つきで前を行く車を見つめていた。無機質なエンジンの音はいかにも力強い感じをたたえ、それが、少年にはしつこく感じられていた。その理由は少年自身にはわかりきっており、そのせいでますます強く感じているのだった。
そんな少年に寄り添うように少女は立っていた。その表情は少年のだるそうな表情とは違い、悲しげな雰囲気を漂わせていた。涙がにじんでいるように見えなくもないその瞳で、少年と同じように黙って車を見つめていた。二人とも話そうとはせずに、あくまでも黙って。
信号が赤から青に移り変わり、二人はほぼ同時に足を前に出した。秋という時節柄、すでに日も沈み始めた。辺りは多少暗く、買い物帰りの主婦などで横断歩道は埋め尽くされた。その中で、少年たちは多少異質に見えなくもなかった。少年はそれを気にしているようで、辺りを見ては居心地が悪そうにしている。少女のほうは目を開いていながらも周りに注意を払っている気配はなく、歩き出してもなお少年に寄りかかっていた。少年はそれをいくらかうっとうしく思っているようだったが、口には出さず、やはり冷めているような目で時折少女を見つめた。
少年が少女と付き合いだして、三ヶ月ほどになっていた。それを長いと取るか短いと取るかは判断に難しいが、少年の感覚からすると決して短くはなかった。高校生の年齢でどれほどの恋愛ができるかは少年の知るところではなかったが、三ヶ月という長さは、少年が高校生でいられる時間と比較しても、短くはないだろう。
少年は歩きながら、なんとなく付き合い始めたころを思い出していた。告白してきたのは、確か少女のほうからだった。あまり親しくもなかった女子になぜか校舎裏に呼び出され疑りながらも行ってみると、今は少年の横にいる少女が、恥ずかしそうに立っていたのだった。その姿は今にも逃げ出してしまいそうで、自分が呼び出されてのこのこと付いてきたことに罪悪感を覚えたほどだった。
呼び出した女子はさっさと退散してしまい、取り残された少年はひどくあせった。どうしていいのか、当時の少年にはまったく見当もつかなかったのだ。そうしてしばらくいるうちに、少女は絞り出すように声を出した。少年はその内容をほとんど覚えていないが、おそらくそれは告白といっていいものだったのだろう。そして、少年はそれを快諾したのだった。なぜ? なぜそれを受け入れたのだったか?
「・・・暗くなってきたね」
少女は小さな声で言った。今少年が回想していたように、その声は絞り出すような声であった。少年は一瞬考えていることが気取られたかと思って狼狽したが、平静を装う。
「ああ、そうだな」
少年はひどくそっけなく答えた。感情を表に出さないためでもあるが、今までもたまにこういう会話をするときがあった。二人でいるときに会話が途切れてしまい、少女が懸命に話題を作ろうとするのを少年は無慈悲にも切り捨てた。多くの場合は少年自身もその返答に後悔していた。なぜもっとやさしくしてやれないのだろうか、少年はそう思いながらも、口に出す言葉はその意に反した。たまに思うことは、もしかしたら自分は本当に少女に冷たくしようとしているのではないかということだ。その感情が不安になることもあったが、少女の顔を見るたびにそんなはずはないと思い直していた。まるでそれが義務のように。
そのことを思い出して、少年は少女の顔を覗き込む。横に立っているはずのその顔が、どこか遠くに感じられる。ピントが合っていないような、どこかぼけたイメージだ。これは対象物より、どうも見る側の問題のようだ。
少女が少年の視線で顔を上げて再び口を開こうとすると、少女のポケットから振動音が聞こえた。少女はあわてて少年から体を離し、携帯を手に取って会話を始めた。その動作を見て、少年は足を止める。時間をつぶす当てもなく、少女の会話に耳を済ませる。
話しぶりを聞いていると、どうやら同級生からの電話だったらしい。学校は同じでもクラスが違うため、少年は少女の交友関係をあまり深く把握していなかった。それどころか、少年はそのことに興味を持ったこともなかった。付き合い始めたころ、少女のほうから少年の交友関係を聞いてくることがあったが、少年にはその問いがひどく疎ましく感じられたのだった。理由は実に子供じみたものだ。少年は、少女の前での自分と友人の前での自分を使い分けていた。それを悟られるのがいやだったのだ。格好をつける、というのとも少し違う。どこが違うのか、はっきりとした説明は出来そうにないけれど。
「・・・うん、うん。じゃあ」
少女はそう言って携帯を切った。すぐに切ってしまったものの、それを後悔するかのようにしばらくは携帯を見つめていた。それを何も言わずに見つめている少年は自分でも意地が悪いような気がしたが、改めようとは思わなかった。
「あ、今のは友達から」
少女は場の空気にいたたまれなくなってか、努めて明るく言った。少年はそれを聞いてどこかほっとした気持ちになりながらも、何も言わずに黙ってうなずくだけだった。
いまだに少年は少女との関係に現実感を覚えていなかった。少女が自分に告白した理由もほとんど覚えていない。いや、本当は知らないのかもしれない。知らないからこそ思い出せず、どこかだまされているような、夢を見ているような思いに駆られているのではないか?
「これからどうする?」
少年は考えを止めるために故意に腕時計を見つめた後、少女に言う。少女も、自身の腕にまかれたおもちゃのような、可愛い時計を見る。男と女の違いを感じるのは、こんなときかもしれないと、ぼんやり考える。ごくわずかな仕草、身の回りの品々、男女の差は歴として存在する。それほど遅い時間でもないのだが、これから何かするには微妙な時間帯だったので、少女は時計を何度も見直す。
「そうね・・・今日は何時まで平気なの?」
少女は少し考えた後、わざとらしい明るさをもって言った。
「いつもどおりだよ」
少年はそっけなく言う。
「じゃあ、えっと・・・どうしよっか?」
「俺がそう聞いたんだろうが」
少年はため息とともに答えた。少年のその対応は、少女に少なからず不快感を与えたらしく、少女の顔が少しむっとした顔になる。それでも少年は特に気にする様子はなく、ぼんやりと、行きかう人を眺めていた。
こうやって見ると―――
少年は横にいる少女の存在を忘れてぼんやりと思う。
ひとってたくさんいるもんだな―――
「何を見ているの?」
少年がまた無言になったのが嫌なのか、少女は少年の顔を覗き込むようにして尋ねた。少年は視界が突然少女の顔で満たされたことに驚いて少し表情を変化させたが、すぐにもとの表情に戻る。
「別に何を見ているわけでもないよ。ぼーっとしていただけだ」
少年はそう言いながら虚しさをおぼえていた。話しても理解されないだろうと思うし、だからといって少女にそれを話せないのは寂しくもあった。理解されなかったら自分がどんな風に思われるのか、それが怖いのだ。
少女は少年を見つめた後、つらそうな声を出した。
「・・・引越ししたら会えなくなっちゃうね」
「そのうち戻ってくるって、何度も言っただろう?」
「だけど、やっぱり・・・」
少女の顔がどんどん暗くなっていくのを見て、少年は呆れたようにため息をついた。まったく、今更何を言い出すのか。
少年の引越しが決まったのは確かに急だった。少年の父親の海外赴任が決まり、少年もそれに同行することになったのだ。しかしそちらに永住するつもりは少年にはなく、一年ほど留学するつもりで同行を決めたのだった。
そのことを少女に話したのは一週間ほど前のことだ。本当はもっと前から決まっていたのだが、少年はそれを少女に伝えることを拒んだ。おそらく少女との関係を壊したくなかったから伝えたくなかったのだろうと、自分でもわかっていた。いや、考えるようにしていた。そんなものにこだわる自分が滑稽ではあったが、ついに伝える気にはなれなかったのだ。
それを話したときの少女の反応は少年の予想通り、見ていて痛々しいものだった。少年にいくつか質問を投げかけ、ようやく事情を理解したとき、少年も予想しなかったことに涙を流した。少年はそれを見て、慰めようといった感情や謝ろうといった発想は一切生まれず、ただなんとなく世の中が馬鹿らしく思えた。そしてそのとき以来、急速に少年の感情は冷めつつあった。
「まあそう落ち込むなって。ほら、新しい彼氏でも見つけるとか」
少年は冗談めかして言うが、少女のほうはそれを冗談と受け取るほど余裕はなかったようだ。
「どうしてそういうこと言うの? 私、本気で・・・」
少女はそう言うと再び泣き出してしまった。あまりにも人目をはばからずに泣くので、少年は周りに変な目で見られていないかと思い、辺りを見回す。幸いなことに少し人通りも減ってきてはいたが、それでも主婦から好奇の目で見られていることが感じられる。少年は慌てて泣くのを止めようとするものの、かける言葉も見つからずに立ち尽くしているだけだった。下手に言葉をかけても逆効果にしか少年には思えなかった。
「悲しくないの?」
少女は突然顔を上げ、涙で潤んだ腫れぼったい瞳で少年を睨んで言った。少年は狼狽したが、すぐに問い返す。
「何が悲しいのさ?」
「こうやって話したりとか、一緒にどこかに行ったりとか出来なくなっちゃうんだよ?」
少女は時折洟をすすりながら、怒ったような声で少年に向かって言った。少年は困ったような表情をしながらも、逆らうとまた泣かれるのではないかと思って相槌を打つ。
「ああ、そうだな」
「何で平気なの? 何で?」
「さあ」
少年は少女の真剣な目に耐えられず、目をそらして答えた。その涙でにじんだ瞳を、少年は恐れた。自分が触れてはいけないような綺麗なものがそこにあるように思えて、それを見ると自分がいかに醜いかを直視しなくてはいけないように思えて、それを反射的に避けてしまった。
「なんでだろうな」
少年は辛うじてそう答える。
「私と一緒にいて、本当は楽しくないの? ねえ、教えて」
「楽しいよ。うん、楽しんでいたんだと思う」
「た? じゃあ今は? 今はどうなの?」
なぜ付き合うことにしたのだっただろうか。確かにそこには理由があったように思えた。思い出せない。それは確かに大切なことで、忘れてはならないことではなかっただろうか。それを覚えていたころは少女との関係を楽しんでいて、忘れてしまった今、どことなくすっきりしない思いで一杯になってしまっているのではないだろうか。なのに、なぜ忘れてしまったのか、いつ忘れてしまったのか、それさえも・・・
「どうなんだろうな」
あたりは薄暗くなり、街灯がつき始める。その状態は先ほどまでよりもむしろ明るく、少年には皮肉のように思えた。先ほどよりもはっきりと見えるようになった少女の顔は涙に濡れながらも、少年を厳しく非難するようにも、切なくなにかを乞うようにも見えた。
少年は、自分がその期待にこたえられないことを思いながら、ぼんやりと歩き出した。少女はしばらく立ち尽くして少年が遠ざかっていくのを見つめたが、やがて小走りに少年に追いついた。
小説はまたの機会に読みます。この量では、読むだけでも骨が折れそうなもんで。
関係ないけど、G-songさんにコミュニティに入れと
命令提案してきたライブドアが大変なことになっとりますよ。メキシコにまで手を伸ばしていたんだから、他にもいろいろやっていたんでしょうね。